2009年5月20日水曜日

ときどき思い出すこと ~飛行機事故のこと~

自分のことではなくても、
胸が締め付けられそうになります。
私が生まれる前の話です。



父方の祖父は、全日空機羽田沖墜落事故で亡くなりました。
1966年(昭和41年)2月4日、享年55歳。
札幌では雪祭りのさなかです。


今ではありえないことですが、この事故は結局、
原因不明として処理されました。
しかし、その後に及ぼした影響を鑑みると、
いろいろな意味で、すごく大きな事故でした。

父は事故当時のことを、あまり話したがりません。
ある意味では当然かもしれないと思います。
何の罪もない、かけがえのない存在が、
何の前触れもなく、一瞬にして奪われたのですから。
その苦しみは、計り知れなかっただろうと思います。

ノンフィクション作家の柳田邦男さんの本に、
『マッハの恐怖』というのがあります。
報道記者時代に追った飛行機事故の記録が、
まとめられたものです。
(1985年の日航機墜落事故は『続・マッハの恐怖』に所収。)
この本には、全日空羽田沖墜落事故の詳細が、
克明に記されています。

この本の存在は以前から知っていましたが
これまで、どうしても開いてみる勇気がありませんでした。

しかし、祖父の最期について知るにはこれしかない。
2年前、私は意を決してこの本を読みました。

口絵の写真を見ただけで、私は涙が止まらなくなりました。
東京湾に浮かぶ、引きちぎれたような機体の残骸。
想像してください。あの鉄の塊が、
いとも簡単に破壊されるほどのエネルギーを。
羽田沖までやってきた全日空機が、
あともう少しのところで、いかにして落ちていったか。
読み進むにつれ、その光景が、
目の前に再現されるかのようでした。


祖 父 は こ う し て 亡 く な っ て い っ た の だ ・・・


私の弟はこの本を読んだあと、
羽田空港へ、
かつてその現場であったであろう場所へ、行きました。
居ても立ってもいられなくなったのでしょう。

私にはまだその覚悟はないけれど、
この本は私のお守りのようになりました。

この事故があったことによって
生を受けたという自覚があります。
この命を、
祖父の死によってもたらされたこの生命を、
あだやおろそかには生きられないと思っています。

志半ばで他界した祖父の、
その志をそのまま継ぐことはできなくても、
せめてその気持ちを、
思いを、つないでいけたら。

そんなことを、折に触れ、考えていたりします。


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